トルクル(TorqueL) PS4/PSVita SCEA/SCEE向け対応を振り返る
※SCE各社は現在SIEですが、当時はSCEだったのといちいち直すのも面倒なのでSCE表記にしています。
トルクル(TorqueL) PS4/PSVita版 は各国リージョンで以下の日時(現地時間)でリリースされました。
日本(SCEJAリージョン): 2014年12月24日
アジア(SCEJAリージョン): 2015年1月27日 (韓国のみ2015年2月26日) ※日本版のパッケージデータをそのままリリース
欧州(SCEEリージョン): 2015年8月11日
北米(SCEAリージョン): 2015年8月11日
トルクル(TorqueL) PS4/PSVitaはゲーム内のローカライズは一切なく、マニュアルも規定上最小限しかつけていません(※規定はリージョンごとに異なる)。
それではなぜ欧州・北米は約8ヶ月の差ができたのか、作業を振り返ってみたいと思います。
※以下、ざっくりとした期間を書いていますが、長さは前後したりかぶっていたり間が空いていたりするところがあります。
ローカライズ(0日)
先に書いたとおり、ゲーム内のローカライズはありません、マニュアルに関しても規定上必要な素材を足したり差し替えたりするだけで対応が完了しています。
ちなみに、ストア上のテキストなどの翻訳はパブリッシャーにおまかせです。(PVのテキストとかは適当に自分で訳してますが)
ただ待っていた(欧州約4ヶ月,北米約5ヶ月)
日本でのリリース後、セルフパブリッシングになるSteam版の作業を進めつつ、いつ提出できるようになるか逐次確認していたのですが、契約の関係やらシステムの関係なのか詳しいことはわかりませんが欧州は約4ヶ月,北米は約5ヶ月、そもそもチェックに提出できないという状況が続きました。
その間、パッチでの修正やセーブ機能の実装などで変更が多くなり、また当初の予想以上*1に欧州・北米リリースが遅れることが確実になってきたので、欧州北米へはすべての修正を取り込んだものを初期バージョンとしてリリースすべきと判断し、作業と調査をしつつただ待つ状況が続きました。
これは、ブランチやバージョン管理などの面で避けたい事態でした。
SCEEへの対応(約1ヶ月)
ようやく欧州でチェック提出できるようになったので、日本版1.0.2相当のパッケージをチェックにかけたところ、以下の修正依頼がありました。
- セーブデータアイコンを追加すること(PS4版)
- タイトル画面の"on PlayStation(R)"の表記変更
- タイトル画面のFullPowerSideAttack.com表記を削除すること
セーブデータアイコンの追加に関しては、当時規定上は推奨扱いで必須ではなかったと思うのですが、作業的にそう大変ではないので即対応しました。
"on PlayStation(R)"の表記変更については、各リージョンあるいは国単位で商標(並びに名称)周りの取扱が異なり、日本ではそのまま通ったところが引っかかりました。表記を変える方向だとプラットフォームごとに変更する必要が出てくるので、それならと"on PlayStation(R)"表記そのものを削除しました*2。
タイトル画面のFullPowerSideAttack.com表記を削除することについては、どうやらウェブサイトへのリンクと同等に扱われているようでした。
これは海外での一般的な規定として、ゲーム内からアクセスできるすべての情報は該当言語にローカライズされている必要がある、というものがあります。(例えばオンラインマニュアルや電子説明書、公式サイトへのリンクなどが該当します)。トルクルのゲーム内にFullPowerSideAttack.comへ直接飛ぶ機能はないのですが、タイトル画面に記載されていることが問題とされたようです。
これは「コピーライト表記を変える・消す」とか「チーム名を変える」に近い穏やかではない話です。
パブリッシャーを通じて、「そもそもリンクへジャンプする機能は搭載しておらず、"FullPowerSideAttack.com"は開発チームの正式な表記であり、また大切なコピーライト表記を変更することは避けたい」旨をEに伝えましたが、2週間ほどして修正依頼は変更ないことが通知され、仕方なく.comをスペースで埋めることで対応を行いました。*3
それに伴い、エンディングクレジットでのコピーライト表記を
Copyright 2013-2014 FullPowerSideAttack.com All Rights Reserved. / Music Copyright 2014 sanodg [Nobuyoshi Sano] We deleted ".com" behind the "FullPowerSideAttack" of a title screen by non-link request of SCEE.
と変更したところ、チェックでSCEEによる要求であることを削除するよう修正依頼があり、
Copyright 2013-2014 FullPowerSideAttack.com All Rights Reserved. / Music Copyright 2014 sanodg [Nobuyoshi Sano] We deleted ".com" behind the "FullPowerSideAttack" of a title screen for non-link
という表記に変更し、チェックを通しました。
ちなみに、公式サイトなどでの正式な表記は
Copyright 2013-2014 FullPowerSideAttack.com All Rights Reserved. / Music Copyright 2014 sanodg [Nobuyoshi Sano] We deleted ".com" behind the "FullPowerSideAttack" of a title screen by non-link request of SCEE.
のままです。
SCEAへの対応(約1ヶ月)
SCEEへの対応作業がほぼ終わったぐらいのタイミングでSCEAにチェック提出が可能になりました。
先のSCEE向けの対応をすべて取り込んだパッケージをチェックにかけたところ、SCEAからは以下の修正依頼がありました。
PSVitaでカメラ機能を使ったゲーム・アプリケーションを開発するとき、従うべき規定があります。トルクルのPSVita版はカメラを利用した簡易ARのような機能を搭載していますが、カメラによる撮影機能はゲームに搭載していません。
指摘された規定はゲーム・アプリケーション内にカメラによる撮影機能がある場合の規定で、撮影機能が無いトルクルはそもそも該当しない指摘事項でした。
この段階でSCEA/SCEE向けでのバージョンの分化が懸念されたので、SCEEでのリリースを一旦止めました(SCEEでのチェックは問題なく通っていた)。
パブリッシャーを通じて「トルクルにそもそも撮影機能はなく、指摘された規定にそもそも該当せず、修正依頼は無効である」旨を連絡したところ、2週間ほど経って「修正依頼に変更はない」ことが連絡されました。
PSVitaのシステムの正常な挙動をゲーム側で変更しろと言われているのに等しい要求で、自分からA側への直接のパスがないことから、日本側のサポートへ状況と「どう対応すればいいのかわからない」旨を連絡したところ、2週間ほどでAの修正依頼が取り下げられました。
結局この修正依頼を覆すために一ヶ月かかりました。
再提出QA待ち(約2ヶ月)
SCEAへの修正依頼への対応の間に、Chamber21で意図していない演出が発生していることがわかりました。これは制作者にしか判断できない小さなバグで以前からのSCEのチェックでは特に問題になっていませんでした。
SCEAでの停滞があった時点でSCEEのリリースは止めていましたので、このバグをパッチ修正ではなく、予め修正したパッケージを再度提出したいことを各所に伝え、調整を依頼しました。
一ヶ月ほど経って再提出が可能なことが確認されました。
しかし、その後一ヶ月ほどに渡ってQA日程が埋まっていることがわかりました。(E3後とかそれぐらいの時期)
待って提出するほかありませんでした。
徒労*4
E,Aともに再提出QAも全て無事通過し、ようやく肩の荷が下りたかなと思っていたところ、SCEAより信じられない連絡がありました。
PSVita版に関して、再提出したものではなくその一つ前のもの(Chamber21の演出バグ修正前)が配信されることになるというのです。
意味不明すぎて何言っているのかさっぱりわかりませんでしたが、覆すことはできず、SCEAのPSVita版のみパッチを作成する羽目になりました。
参考: [Information] I will release a patch of TorqueL for PSVita in SCEA region - FullPowerSideAttack.com
管理上リージョン別でもバージョンの統一しておきたい(またそのためにリリースタイミングも合わせたい)という思いや、バグは一つでも直しておきたいがための一連の行動は全くの徒労に終わりました。
最後に
さて、ぼちぼち欧州北米リリースから一年が過ぎたわけですが、何度も書いては破棄・放置していたメモを読み返してもある程度冷静*5に捉えることができるようになったので記事にしました。
EやAへの対応でモチベーションは霧散し*6、特にAへの不信は拭えないものとなりました。
一生関わりたくないとまでは言いませんが、しばらくはこういった類の作業は御免です。