トルクル(TorqueL) Wii U版 プレスリリースの補足
本日、FullPowerSideAttack.com、任天堂とのWii Uプラットフォームライセンス契約締結とトルクル(TorqueL)Wii U版開発を発表
というプレスリリースの公開と各メディアへの発信を行いました。
- 『トルクル』箱の辺を伸ばしてゴールを目指す2DアクションゲームのWii U版が登場 - ファミ通.com
- FullPowerSideAttack.comが任天堂とライセンス契約を締結―Wii U版「TorqueL」開発を発表|Gamer
- 不思議な2D回転アクションゲーム「TorqueL」Wii U版の配信が決定 - 4Gamer.net
この記事はその補足となります。
- トルクル(TorqueL) Wii U版はいつごろから開発していましたが、進捗どうですか?
- トルクル(TorqueL) Wii U版が試遊できる機会はありますか?
- CERO審査料っていくら?
- IARC(IARCシステム)って何ですか?
- 公正取引委員会に相談してるって具体的にはどういうことですか?
- Wii U版は日本以外では出ないの?
- おしまい
トルクル(TorqueL) Wii U版はいつごろから開発していましたが、進捗どうですか?
昨年10月に公開されたNintendo Developer Portalから個人開発者として登録手続きを行いました。*1
11月ぐらいに任天堂よりコンタクトがあり、メールや電話、また実際にお会いしての話し合いなどを通じて現在の状況や問題点の共有などを行って来ました。当初前例が無いということで進め方を含めまっさらな状態だったので、Unityが使えるということで手早くWii U向けにトルクルを移植して、とにかく動くものがある状態にする方向で進めました。*2
12月に任天堂よりWii U開発機材を借り受け、移植作業を開始しました。
12月中に必要な技術的対応の調査、手元で動作させるところまでの対応、プラットフォームごとの対応を行い、1月中に試遊機で動作可能にするパッケージングへの対応や各種コントローラーへの対応検討と決定、機能的な実装対応を完了しました。*3
基本的にはあとはバグが出たら対応するだけの状態です、最近も画像・映像素材用にプレイしていたらバグを見つけたので修正しました。
ちなみに、工程上パッケージデータにはレーティング情報を埋め込む必要があります。 そのため、レーティングが確定するまでは最終チェック*4に提出できません。
トルクル(TorqueL) Wii U版が試遊できる機会はありますか?
7月9,10日に開催されるビットサミット2016の任天堂ブースで試遊バージョンのデモ遊べます。
移植作業は完了しており、通しで遊べる状態ですが、試遊バージョンには以下の仕様を追加してあります。
- 簡易セーブ機能を無効化してあります
- オプションメニューを表示していない状態で操作しない状態が5分程度続くとリセットされます。
僕自身は基本的に自分のブースの方についています。人が並んでいるようなら10分程度で交代するよう言われると思います。
ビットサミット以降の予定については確定したら Twitter や Facebook などで告知していきますので、フォローやらいいねやらよろしくお願いいたします。
今回、トルクル(TorqueL) Wii U版は純粋な移植作ですので新作ではありません。追加要素も予定していません。
しかし、今回のWii U版の開発と発表にともなって改めて様々なイベントへの出展の検討と申込を行っています。
CERO審査料っていくら?
任天堂との話し合いでCEROによるレーティングが必要であるとわかった5月頭のタイミングでCEROに問い合わせを行い、各種資料を頂いています。
CERO自身が審査費用を一般に公開していませんので、ここでは具体的な金額の記述は避けて書きます。
どのパブリッシャーさんも同一条件のはずですので、業務上にCEROレーティングに関わったことがある方であれば具体的な金額はご存知かと思います。
審査費用はタイトル毎にかかり、CERO正会員向けと非会員向けで審査費用が変わります。正会員の方が審査費用は安くなります。
マルチプラットフォーム同発や移植の場合の扱いなど諸条件が細かくあるのですが、依頼者が異なる場合は同一タイトル扱いにならないと確認しているので、僕が今回審査を依頼する場合は新規タイトル1本としての扱いになります。
例えばPLAYISM(アクティブゲーミングメディア)がWii U版の審査を出すときはPS4/PSVita版の移植扱いの審査費用になるはずです。
正会員になるには定款にある、入会金200,000円と年会費100,000円が必要です。入会金は入会時のみ、年会費はその名の通り毎年(毎年度)必要です。
年にある程度本数を出す場合は正会員になっておいたほうが全体として安く済む立て付けなのですが、今後のことはわからないということで入会金と年会費も今回の1タイトル審査に必要な費用として足し込むと、非会員向けの審査費用より高くなります。
金額例として、昨今の開発者的にかなり身近だと思われる費用の一つ、iOS Developer Programの年会費は現在11,800円です。
これらから無理やり不等式を作ると
CERO正会員向け審査費用+CERO正会員入会金(200,000円)+CERO正会員年会費(100,000円) > CERO非会員向け審査費用 > CERO正会員向け審査費用 > iOS Developer Program年会費(11,800円)
という感じです。
僕個人が払える払えないの話であれば、幸いなことにトルクルはPS4/PSVita/Steam/Windowsパッケージなどですでに(今でも)売上がありますので、それらをうまくまとめれば工面することは可能な見込みです。
ただ、商売として考えると、パブリッシャーを介さないことによる一本あたりの売上増加はあるものの、パブリッシャーを介さないことによる広告宣伝効果の低下と自分で抱えることになる作業量を考慮した上で、現状と手元の様々な数字からするとかなり微妙なラインだろうと予測しています。
自分で負担する以上*5はCERO審査費用をペイできなければ純粋に赤字ですし、予測上ある程度のラインを超えて売れなければセルフパブリッシュのほうが売上が低く、法人パブリッシャーにお願いしたほうがよかったということになります*6ので、プレスリリースにある通り、資金の調達方法や法人パブリッシャーを経由することによる販売先の変更も含めて様々な可能性を検討しています。
IARC(IARCシステム)って何ですか?
IARC(https://www.globalratings.com/)はInternational Age Rating Coalitionの略で、日本語訳すると「国際年齢評価連合」という名称になるようです。
IARCを利用すると、デジタル配信のみのゲームソフトウェアやモバイルアプリ・ゲームについて、IARCに参加しているレーティング機関のレーティングを無料かつ一括で取得することが出来ます。
参加しているレーティング機関とストアはIARCのページで確認できますが、
現時点で参加しているレーティング機関: ESRB(北米地域), PEGI(ドイツ以外のヨーロッパ地域), USK(ドイツ), ACB(オーストラリア), ClassInd(ブラジル)
現時点で採用しているストア: ニンテンドーeショップ, Google Play, Windowsストア, Firefox Marketplace
となっています。
Google PlayとWindowsストアが採用しているので、これらのストアでリリースしたことのある人、購入者として利用したことのある人は「ああ、あれのことか」とわかるかもしれません。
IARCレーティングは無料で取得可能で、採用しているストアでは、対象レーティング期間のある地域からのアクセスの時は該当のレーティング機関のレーティングロゴを、対象となるレーティング機関がない場合はIARCのレーティングロゴが表示され、例えば日本のGoogle PlayなどではIARCのレーティングロゴが表示されるという寸法です。(国外や国外端末からアクセスしてみたことがないので実際のところはわからないのですが)
ストア上での表示切替の話も含むので、一連のシステムと考えるのがわかりやすいかと思います。
CEROが参加を検討しているかどうかについては、 東京都NPO法人情報提供システムで公開されている平成24年度から平成27年度までのCEROの事業報告書によれば、平成25年度,平成26年度,平成27年度と継続してIARCへの参加可能性の検討が行われておりますが、現在までに検討内容・結果や参加までのスケジュール等は一切発表されておりません。
公正取引委員会に相談してるって具体的にはどういうことですか?
公正取引委員会に電話で相談した上で、書面による申告を行いました。
申告は
独占禁止法に違反する事実があると思うときは、だれでも、公正取引委員会にその事実を報告し、適当な措置を採るよう求めることができます。これは、違反行為の被害者でも一般消費者でも、違反行為を発見した人であればだれでもよいのです。(ウェブサイトの記述より引用)
という制度です。
基本的に自主規制団体による自主規制や、事業者が自主規制団体によるチェックを受けたもののみを取り扱うことそれ自体は独占禁止法上特に問題ないのですが、「参入に必須となる家庭用ゲーム機産業向けレーティングを実質的に独占している」「(今回の任天堂との取り組みで)個人が参入できるようになった」「ゲーム規模・事業者規模に関係なく審査費用が一律かつ高額」「無料で審査可能となる国際的取り組み(IARC)への対応の遅れ」といった状況を加味すると参入の阻害(競争の阻害)となり独占禁止法上の問題となる疑義があるとして、プレスリリースやこの記事で触れている問題点をベースに具体的な記述・金額・数値をまとめた資料などを申告資料として6月頭に送付済みです。
何か起こることが確約されているわけではありませんし、細かく進捗が伝わってくるわけでもありません。 年単位で時間がかかることもあるので、少なくともトルクル(TorqueL)の発売をどうするかという短いスパンではどうにかなる可能性は高くないと思っています。
2016年9月18日追記: 公正取引委員会からの通知書が届きました。 - 戸袋に手を引き込まれないように
Wii U版は日本以外では出ないの?
今回の任天堂との契約は日本国内向け配信についてです。
それ以外の地域についてはNoAやNoEなどの当該地域の担当法人との契約と折衝が必要だと思いますので、僕個人でパブリッシュまで持っていく予定はありません。
ただ、トルクル(TorqueL)はPS4/PSVita版のように基本的にゲーム内のローカライズが必要ない形で進めていますので、契約と折衝の問題と電子マニュアルの対応さえなんとかなれば出せるんじゃないかと思います。
IARCが適用できる地域向けであればレーティング費用もかからないでしょう。*7
おしまい
ゲームが作れて、ゲームが出せて、ゲームを遊んでもらえる環境が大事だと思っています。
— なんも@BitSummit No.48 (@nanimosa) 2016年7月7日
ただやっぱり、モチベーションは別に必要です。
僕のモチベーションは今のところ、僕が作るようなゲームで楽しんでくれる人がいるはずと信じ続けていることです。
だからもうちょっとだけ続くんじゃ。
2018/03/05 修正: CEROのウェブサイトリニューアルでリンク切れになっていた箇所を修正しました。
*1:Wii U以外でも任天堂プラットフォームに興味がある人は申請するといいと思います。
*2:3DS向けはトルクルを移植するとなるど解像度的にカメラの調整が必須で、そうなると全ステージレベルデザインからやり直しになり、技術的にも解決が必要な問題がいくつかありそうということでWii Uの方が手っ取り早く行けそうという判断をしました
*3:Wii U買ったりBitbucketのPushをTwitterに流してるので察した人はいたかもしれない
*4:ロットチェックとかFQAとかサブミッションとか各所色々呼び方ありますが
*5:とりあえず文化庁メディア芸術クリエイター育成支援事業の選考には落ちました(1年ぶり3度目)